【静岡県河津町】7/27開催ツアー体験レポート
200年受け継がれてきた「わさび田の環境整備」を体験! 豊かな自然の中での農作業を通じ河津町ならではの魅力を実感!
河津桜の発祥地として全国的にも有名な「河津町」は、静岡県の伊豆半島東側に位置し、質の良い「わさび」が採れることでも知られています。
地形的に海と山間に囲まれる河津町は、わさびを栽培するのに最適な、豊富な澄んだ水と山あいの自然環境があり、山間部にはいくつもの「わさび田」が広がります。
「わさび田」と聞いて段々畑のような形を思い浮かべる方も多いかと思います。
これは静岡水わさびの伝統栽培方法である「畳石式わさび田」と呼ばれ、階段方式にすることによって絶えず新鮮な湧水を上から下へ駆け流すことで、わさびに湧水の養分と新鮮な酸素を供給することができる方式なのです。
とはいえ、実際にどんなものなのか、見たことがないとわからないですよね。
というわけで、そんなわさび田の環境整備作業を体験することで、実際にわさびがどのように栽培されているのか、どんな農家の生産苦労があるのか知ることができ、そして、河津の自然に触れ、河津で暮らす生活者(農家)と交流することができる生活価値体験ツアーに参加してきました。
ツアーの集合場所は「河津桜観光交流館」
連日30度オーバーという酷暑が続いていた体験当日。
参加者は各々の交通手段で、河津駅から徒歩10分ほどの所にある「河津桜観光交流館」に集合しました。
河津桜観光交流館は、町内の宿泊や観光スポットを案内してくれる「河津町観光協会」、地元の野菜や海産物、生花などの販売をしている売店があり、体験ツアーの前にお土産を購入する人もいました。
なんと、参加者は満員御礼の8名、自然と触れ合う体験に興味のある方が参加しているようで、ツアーへの期待が膨らみます。
まずは、交流館2階のお部屋で今回の生活価値体験ツアーのオリエンテーリングが始まりました。
この生活価値体験ツアーのイベントを主催する河津町役場の古川さんより、今日のスケジュールと活動内容が説明されたのち、参加者一人一人が簡単な自己紹介を行いました。
東京都、神奈川県、千葉県と静岡県外の都市部からの参加で、同じ興味を抱いて集まったいわば“同志”なわけですから、みなさんの自己紹介が進むにつれてお互いに興味も湧き、場も和んでいきます。
さて、オリエンが終われば早速作業体験です!まずは体験現場へ移動します。
体験をご提供していただいたのは
200年くわさび田を代々守り継ぐ「東畑・伊豆わさび食品」の渡邊さん親子
30分ほど山深くまで車を走らせると、山あいに整然と石積みされた階段状のわさび田が姿をみせてくれました(上画像は収穫前の別のわさび田)。
車を降りると、市街地の茹だるような暑さがだいぶ軽減され、作業していても負担にならないような体感。
標高が高く木陰があり、新鮮な湧水が流れているという、人間でも過ごしやすい気候だから良いわさびが栽培できるのだと実感しました。
今回、作業体験の為にわさび田をご提供いただいたのは、この河津町で“東畑”の屋号を持ち、九代にわたって200年以上わさび農家を営んでいる「東畑・伊豆わさび食品」さん。
九代目となる渡邊武彦さんが私たちを迎え入れてくれ、作業の内容や注意点などを説明していただきました。
今回私たちが体験する作業は収穫が終わったわさび田の清掃作業。
わさび田は山あいの谷地形で勾配があり、しかも足元は砂と泥と砂利で少しぬかるんでいるので、とにかく足元に気をつけなければいけません。
さて、渡邊さんのお話も終わり、いよいよわさび田に足を踏み入れます。
収穫後のわさび田にとってよくない苔や雑草、
生き物(カワニナやサワガニ)を除去し環境を整える作業を行います。今回私たちが作業する部分はこちら(画像上)。
写真手前側とそのひとつ上の2段分です。
人の手でわさびが育ちやすい環境に整備されているわさび田ですが、ご覧いただければ分かる通り、少し放っておくだけで石積みや田んぼ部分にこのように苔や雑草が生い茂ってしまいます。
これらに加え収穫されなかった小さいわさびも排除し、さらにわさびの発育にとってよくないカワニナやサワガニなども駆除する必要があるのです。
絶えず水が流れている状態のわさび田は、泥状というよりは水捌けのよい細かい砂が敷き詰められている状態なので、それほど歩きにくいということもなさそう。
とはいえ少ない人数でこれらを掃除するのはなかなかの重労働なのは想像できます。
農家さんの苦労が垣間見られた瞬間です。
では早速作業を始めましょう!初めてのわさび田に足を踏み入れ
最初はおそるおそる…気づくと作業に没頭!
筆者も人生で初となるわさび田へいよいよ足を踏み入れます。
表面的には雑草や苔などで覆い尽くされているように見えますが、田の土や水に直接触れてみると、しっかりと人の手が入っている田なのがわかります。
実際に触れてみることで判ることが沢山あるのです。
そういったことが経験できるのもこの体験ツアーの意義の一つですね。
始めはおそるおそるだった参加者の皆さんも、わさび田の環境に慣れ、そして作業にも慣れてくると能動的に動くように。
石積みは他の人がやっているから自分はこちらをやろう、というように積極的に声を掛け合うようになると自然と一体感が生まれ、役割分担もできるようになっていきました。
田んぼ部分は雑草のほか、収穫時に発育不足のためそのままにされた小さなワサビも沢山残っていました。
わさびはそこまで根をしっかり張るタイプの作物ではありませんが、それらを掘り出すのも一苦労。
そして特に大変だったのが石積み部分。ここは絶えず水の流れがあるので苔がびっしり生えています。
それらをしっかり排除して、なおかつ雑草も取り除きます。
石積み部分はスムーズに水が流れることが大事なので、水が満遍なく流れるように不要物は取り除き、石積みをキレイにしていきます。
苔や雑草を掃除する他、わさびにとって
よろしくない生き物たちも駆除していきます
苔や雑草の他、わさび田にはわさびを栽培するにあたって悪影響を与える生き物がいますので、それらを駆除していきます。
カワニナはわさびに付くとキズになってしまい、売り物にならなくなってしまいます。
サワガニは田んぼの土壌を空洞化させてしまい、わさびに充分な栄養が回らなくなってしまいます。
これらの生き物も見つけたら捕まえて駆除するのですが、自然や農作業に疎い筆者は、なかなか目が慣れず見つけられませんでした(笑)。
休憩も入れつつ、作業に没頭すること1時間半。
ふと気づくと作業を始めた時に比べて見違えるようにキレイになっているではありませんか!
そのキレイさとスピードには体験提供者の渡邉さんも驚くほどで、参加者+主催側スタッフも加えて10人ほどで作業していたのですが、参加者のみなさんがとっても丁寧に、一生懸命作業してくれたのがとっても印象的でした。
作業のBefore→Afterがこちら。
石積み部分もスッキリきれいに!
作業前(Before)
田んぼ部分は発育不足のわさびや雑草で覆われ、ところどころ水が滞留している部分もありました。
石積み部分には苔がビッシリと生え、水の流れも滞っていました。
例えばこれを2〜3人で整備しようとすると、まる一日がかりになるのは間違いないですね。
農作業は重労働、ということがわかります。
作業後(After)
田んぼ部分に残っていたわさびや雑草は綺麗に排除され、水が滞留することなくスムーズに流れるように。
石積み部分はびっしり張り付いていた苔が取り除かれ、積まれた石の表情を眺めることができるほど綺麗に。
滞っていた水の流れもまんべんなく流れるようになりました。
収穫前のわさび田も見学させていただきました
作業終了後、収穫前のわさび田も見せていただくことができました。
まさに私たちが普段イメージする畳石式わさび田の姿です。
サラサラと流れる湧水の清流と、そこからたっぷり養分を吸い上げて生き生きと生い茂るわさびの葉。
そしてそれらを静かに見守る河津の大自然。
ひと仕事終えた後ということもあり、日頃の都市部での生活では味わえない爽快な気分に包まれました。
貴重な経験になりました。
今回、このような体験を提供していただいた「東畑・伊豆わさび食品」の九代目、 渡邊武彦さん(写真右。
写真左は八代目であるお父様、渡邉昌昭さん)に終了後、お話を伺うことができました。
「収穫体験などはよくあるじゃないですか。
でもこういった掃除などの整備作業体験というのは珍しいのじゃないかということで役場のみなさんとやってみようと。
作業自体は難しいものではないのですが、みなさんとても丁寧に取り組んでいただいたのがありがたかったですね。
自然や土いじりが好きという方もいらっしゃっていたのでとても良い取り組みになったのではないかと。
わさびがどのように栽培されているのかも知ってもらえたでしょうし、触ってみることで分かることも多いと思うんですよ。
農業ってこういった日々の積み重ねなので、その一部でも実感していただけたのは私たちにとっても良いことでしたね」
最後にはお土産も!
河津の魅力の一端を知ることができた体験ツアーでした
なんと最後にお土産もいただきました!
東畑・伊豆わさび食品さんで栽培された立派な生わさび一本まるまるに加え、厳選された商品だけに認定される「静岡水わさびの逸品」に認定された伊豆わさび食品製造の「手づくりわさび漬け」と伊豆山葵食品製造の「わさび味噌」といった加工品2点。
貴重な体験に加え、質の高い河津のわさび商品をこんなにいただけるなんてとってもお得です!
今回の企画を手掛けていただいた河津町役場の企画調整課のみなさん。
ツアー企画からガイド役を担った古川雅也さん(写真中央)
体験造成から広報としても活躍していた渡邉絢子さん(写真左)
企画調整課をまとめる課長の島崎和弘さん(写真右)
参加者を優しく親切に迎え入れていただき、河津の魅力に触れる特別な機会をいただき、ありがとうございました。
そして、暑い中での運営お疲れ様でした。
では当日参加したみなさんの声を抜粋して少しご紹介していきましょう。
「お気に入りの河津の別の魅力を知ることができました」
「もともと河津という土地が好きで年2、3回は通っているぐらいお気に入りでして(笑)。
観光は色々行き尽くしたな、というところでこちらの体験企画を見つけました。
これはいいな、一歩踏み込んで現地の方々と接する良い機会かなと思いまして参加してみました。
わさび田に足を踏み入れるには初めての経験だったのですが、わさび一つとっても栽培するのはとっても手がかかって大変だというのが実感できました。
私たちは今日だけなので楽しかったのですが、これを生業にするとなると本当手間暇かかってますよね。
そういうことを肌で感じることで河津のまた別の魅力を知ることができたのはとても良かったと思っています」
「今日のような作業の積み重ねで、私たちの食卓が
成り立っているんだな、と実感しました」
「私は自然が好きで、他の農業収穫体験なども参加したことも何度かあるんですけど、出来上がった状態だけではなくて、どのような過程を経て私たちの食卓に並んでいるのか、という面にも興味が出てきて。
それに農業ってその土地や環境でも違うと思うんですよ。
その地域に根ざしたものもたくさんありますし、そういったことを知る、経験することが好きなんですね。
それでこちらの体験募集を知りました。
河津といえばわさびですよね。
わさび農家の方々の、よそ行きではない普段されていることを体験できるのでは、ということで参加しました。
体験してみて、予想以上に山奥でしたし、作業も普段農家の皆さんがやられていることそのまま体験できたのがとってもよかったですね。
収穫のようなわかりやすい部分だけじゃなくて、今日させていただいた作業のような地味な部分がたくさんあって初めて私たちの食卓が成り立っているのだなと感じました。
色々と考えるきっかけにもなりましたね。
興味を持っている友人たちもいるのでぜひ勧めてみたいです」
「土や農業を身近に触れられる貴重な経験ができました」
「もともと自然や生き物、植物などが好きなタイプで、ちょうど農業体験などにいくつか参加していたなかでこの企画のことを知りました。
わさび田って普段は入れないですし、なかなか関われないな、と興味を持ったので参加してみました。
収穫体験などはよくありますが、そうではないってのも逆に面白いなと(笑)。
今回の体験を通して、やっぱり農業って収穫のような私たちにもわかりやすい事だけではなくて、むしろ今日の作業のようなことがほとんどなのだな、というのを実際に作業を通して知ることができたのはまさに収穫でしたね」
地域の“人”や“生活”そして“産業”に
触れることのできた意義ある一日でした!
普段生活していると、住んでいる場所ではない別の地域との違いなんて意識しないものですよね。
例えば街中に住んでいると、野山が身近にある農家の一日なんてなかなか想像ができないものですし、知ろうと思ってもなかなかそんな機会があるものではありません。
そんな貴重な機会となった今回の河津町「わさび田の環境整備体験」。
いかがでしたでしょうか。参加者の皆様からも、こういう企画を待っていました。
次があったらまた来ます!他にもこういった企画をやってください!というような嬉しいお声もいただきました。
過疎化が叫ばれている昨今、地域の“人”と“来訪者”を結んで次世代に繋げていく今回の試みは、大変意義のあるものだったのではないでしょうか。